健康経営支援サービス

健康経営向上コラム

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健康経営調査から
見えた実態と
来期に向けたポイント解説

アイテック阪急阪神は、健康経営に取り組んでいる企業の経営者や総務人事部の担当者500名を対象にアンケートを行いました。
調査結果から、見えてきた課題と来年度の顕彰制度に向けて取り組むべきポイントについてビューティ&ウエルネス専門職大学 新井 卓二教授と対談を行いました。

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アイテック阪急阪神:

まずは、アンケート調査の結果をご紹介します。企業が取り組んでいる健康経営に対する施策で一番多いものは「健康診断の受診率100%」でした。こちらは健康経営優良法人を取得するためには必須の項目ということもあり、一番に数えられています。そのほかは受診勧奨や喫煙率低下の取組みなどが回答されていました。ただ、実施した施策の中で効果を発揮したものをお伺いしたところ、様々な施策に取り組んでいるにも関わらず、「健康診断の受診率100%」の回答のみが飛びぬけて多く、他の項目については実施してもなかなか効果が感じられていないという結果になりました。
また、健康経営の施策を立案するうえで課題に感じていることとして一番回答が多かったものが「従業員の皆様との意識の乖離」。健康経営に取り組んでいる企業は多いが、その取組みについて従業員に企業としてアピールができていないのかもしれないですね。今回対談いただく新井先生は、様々な企業を訪問されて著書も出されておりますので、事例など含めてお話をお伺いしたいです。
新井先生:
意識の乖離という課題について、なぜこうなっていると思いますか?
アイテック:
従業員に施策の結果をフィードバックしてないのではないかと思います。健康診断の受診率は従業員が受診したかどうかを総務人事部側で把握できますが、その他の施策は測定ができていないのではないでしょうか。
新井先生:
PDCAが回ってないってことですね。そうすると、何か施策を行った際に従業員に対して都度アンケートをとることが必要ということですね。裏を返せば、健康経営の施策は、やりっぱなしが多いということかもしれないですね。ワークエンゲージメントなどのやらなければならないことのほかにも、従業員アンケートを年に1回程度はとって、会社が行った施策に対して従業員がどのように感じているかということを把握し、さらに施策の担当者がそれを実感しないといけないということですね。従業員アンケートは御社のシステムで支援しているんですか?
アイテック:
HealthCare irisにはアンケート機能があり、この機能を活用すれば従業員に対して施策の評価を確認することができるので、PDCAをまわし、KPIを管理していくということは可能です。
新井先生:
健康経営銘柄企業や健康経営調査に載っている企業はアンケートを取っているケースが多いと思います。もしかしたら従業員は満足感があるのかもしれないのに、アンケートを取っていないことで推進担当者が実感できていないのなら、それってもったいないですよね。推進担当者のモチベーションが下がる可能性もありますよね。私も会社の施策を支援するにあたって、その結果までもフィードバックできるサービスがあるといいなと思います。
新井先生:
フィードバック以外で具体的に推進担当者が乖離を感じるのはどういう時なのでしょう。アイテック阪急阪神さんは健康経営施策いろいろやっていますよね?例えばイベントを行ってその参加率が良いというデータが出てきていたら、積極的に参加してくれているから乖離してない、ということになるのかな?
アイテック:
そうですね。参加数は推進担当者にとっては一番気になる点だと思うので、影響が大きそうです。イベント後のアンケートでよかった・悪かった等の意見も取れるとは思うのですが、まずは参加率、入り口の部分も重要なのかなと思います。
新井先生:
おそらくこのアンケートの回答に関しては、推進担当者がイベントの参加率やアンケートの回答率を見て、それが低いから「乖離している」と推測しているのではないかと思います。つまり社内浸透ですね。どの企業もマーケティングはしていると思うので、顧客に対してと同じような形で社内に対しても宣伝していくしかないですね。
アイテック:
対してデータでは「経営層との意識の乖離」という回答は少なかったです。担当者から見ての問いなので、経営層の意識は高いと推測しました。
新井先生:
それはすばらしいですね。このデータの回答者は健康経営に取り組んでいる企業だからですかね。
アイテック:
調査では、健康経営銘柄、ホワイト500、ブライト500取得企業様が多くを占めていますが、また一方で健康経営に取り組んでいるが、まだ取得していない企業様や健康経営とは何?という企業様もいらっしゃいます。どういったことが取組みを始めるうえでのハードルになるのか、いかが思われますか?
新井先生:
これから健康経営を始めるという企業だと「社長が健康経営に対して興味がない・動かないから社長向けに説明してほしい」と呼ばれていくこともあるので、経営層との意識の乖離はあると思いますね。
アイテック:
どういう風に経営層を説得されますか?
新井先生:
その会社がその業界の1位2位だと、経営層に対しては、海外の株主向けの説明会で健康経営について話すと受けがいいですよということや、ESGの投資先などでこのような話をすると株価があがりますよ、など、そういうところまで話しますよ。
アイテック:
たまに、経営層がタバコをやめたくないから、禁煙施策に取り組んでくれないという話を聞きますが、意識改革は可能なのでしょうか。
新井先生:
社長に関しては「禁煙してくださいと。できないなら健康経営と言えないですよ。」と言ってしまうしかないですね。基本的には期限を決めるのが一番良いです。たとえば「3年以内に役員は全員禁煙にします」と発表をするといいと思います。
こうしてアナウンスすることで、次は部長クラスの人が禁煙しないと役員になれないのかと考えて禁煙する、そうなると次の課長クラスもと、流れ的に禁煙しないと昇進できないのかなと察して行動するようになります。
特にタバコに関しては嗜好性が高いからなかなかすぐにやめられないものです。特に60代まで喫煙してきたような方については、それが生きがいだという方もいて、それをとってしまうのも逆に健康に悪いのかもしれないです(笑)。だから期限をきめて社内にアナウンスしていくことが大事かなと思います。
そしてある程度やると、「僕も禁煙したいです」と転職者が入社するというケースもありました。外に発信していくことで採用にもプラスに働くことがあるので、やはりアナウンスするということが大事だと思います。
アイテック:
各社様見ていらっしゃって、効果検証のためのデータ管理などはどのようにされてますでしょうか?ここは健康経営に取り組むうえで重要なポイントだと思うのですが。
新井先生:
そうですね、健康経営優良法人認定制度を申請されている方はご存じかと思いますが、健康経営度調査の内容がどんどん広がっています。人的資本や両立支援も入ってきているので、そうなってくるとデータを取得する部署が異なるということもあります。データがバラバラになっていると、管理も大変ですが、申請書を書く時も大変じゃないかと思いますね。御社のシステムはもちろんできるのですよね?
アイテック:
もちろん可能です。必要な情報を抽出するので申請書を出す準備も楽になるかなと思います。
アイテック:
当社もホワイト500を目指すなかで、総務担当から申請書について聞かれることがあるのですが、どこまで施策をやっていたら○なのか、△なのかなど、基準はありますか?
新井先生:
施策として実行できていると思ったら○でいいと思います。少しでもやっていたら〇でいいです。ただ、大きく健康経営優良法人の認定順位が上がるとヒアリングがあるらしいです。御社はヒアリングありましたか?
アイテック:
ありました。去年から順位が上がって、ヒアリングがあって驚いたと担当者が言っていました。当社の取組みをお伝えしたところ、問題なく申請できたようです。
新井先生:
ヒアリングがあったからといって駄目ということは全くないです。なのでどんどん実行している施策を記載し、もし齟齬があるようなら来年ここは書き直しますという対応で良いと思います。
アイテック:
健康経営優良法人認定制度の来年度申請に向けて今からやっておいたほうが良いことなど、アドバイスはありますか?
新井先生:
第11回健康投資ワーキンググループで今年の追加項目が発表されています。例えば中小企業の支援ですね。中小企業の場合は浅野製版所が行っている4社連合や5社連合が注目されています。中小企業では健康経営推進担当者が1人しかいない場合が多く、孤立してしまうことがあるので、他の会社とタッグを組んでサービスを提供するという活動を行っています。これが今年から加点される仕組みになるようです。それと10人以下の企業に対しては制度が緩和されるということも発表されていましたね。
大企業に影響する部分としては、派遣従業員や業務委託等の非正規社員に対して、会社が健康経営施策を行うと加点されるようになります。パソナなどの派遣会社は、派遣している社員に対して健康経営をどこまでやっているかは、派遣先の企業によって差があるようなので、ここは来年度の申請に影響がありそうですね。アイテックさんも派遣社員おられますよね?その方たちは施策の対象にしていますか?
アイテック:
派遣社員はいますが、対象にしてないですね。
新井先生:
そうですよね。派遣社員は対象にしてないところがほとんどだと思いますが、一部対象にしている企業もあるらしいです。
来年から派遣先企業における取組と派遣元企業における取組の両方が加点されますので、ここが一番大きな変更です。今から取り組んでおけば○を付けられますね。1年目は社内向けのイベントを行う際に、希望があれば派遣社員や業務委託の方も受け入れますというところから始めて、数名でも参加してもらえたらまずはよしですね。そこから広げて巻き込んでいけば、なお良いと思います。
アイテック:
社員向けと同じように、派遣社員の方にも施策を行い、アンケートをとってPDCAを回していく感じですね。
新井先生:
おそらく、非正規は個人事業主が多いのですが、非正規の方の健診受診率があまりに低いのが問題とワーキンググループの担当者が言っていました。業務委託や個人事業主などをカバーしていきたいという意図ですね。でも実際は短期の派遣社員に対してそこまで負担するのか?という話もありますが。ただ非正規でも優秀な技術のある方は引き止めたいと企業側が考えるなら、その1つの策になるかもしれないですね。
それと、国際展開にも注目ですね。秋に健康経営がISO化されると聞いています。夏に向けてISOの番号が発表されると思います。そうすると来年の健康経営取得企業から順次、ISO番号が付くという形になるのではと思います。あと大阪万博の日本館に健康経営のブースができることが決まっていますので、ぜひ見に行ってください。これを機に海外向けに健康経営をアピールしてほしいですね。経産省はタイでも2月に健康経営のサービス展開を紹介したらしいですし、これからアジア向けに展開していく流れはあります。
顕彰制度でも、海外の従業員向けの施策はずっと加点項目です。海外の従業員も巻き込めているかというのも、これからは重要な指標になると思います。
アイテック:
海外は健康診断の制度が浸透しておらず、整っていないイメージがありますが、海外でも健康診断の受診率100%を目指すようになるのでしょうか?
新井先生:
今は、国によって制度が違うので受けなくてよいのですが、「海外の従業員にも日本国内と同じように受診率100%を求めていますか?」という項目があります。現状、出来ている企業が30%くらいですね。駐在国の健診でも良いので受けさせるという企業もあれば、日本国内と同じ健診は受けさせられないから難しい、と回答している企業が60%くらいある。ホリバリアンで有名な京都の堀場製作所は従業員の6割が外国人だが、全員に受けさせていると言っていました。そういうことは今後求められてきそうですね。
アイテック:
いろいろ変わりそうで、企業の担当者も大変ですね…
新井先生:
さらに直前で認定要件変わることもありますしね。
アイテック:
今後も新しい情報があれば改めて当社主催のセミナーなどでご講演いただけるとうれしいです!ありがとうございました。

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