健康経営支援サービス

健康経営向上コラム

健康経営を担う人事ご担当者様に、
役立つ情報を発信しています。

「健康経営」の
最終的な目的
~「健康経営」と
「業績の向上」の関係性~

健康経営は従業員の健康を推進することにより、その先の目的を達成するための“経営戦略”です。
近年、健康経営により従業員の健康管理を通じて業績向上を図ることに注力している企業が増えています。健康経営は単なる福利厚生を超え、組織全体の持続可能な成長を支える重要な要素となっているのです。

(健康経営の進め方は、【第1回目「メンタルヘルス」への「運動」の重要性 03-健康経営における課題の把握と解決策】をご参照ください)

01-問題点・課題の特定

■健康管理データの活用

従業員の健康状態を把握するために、健康管理データや健康診断結果を活用することが不可欠です。定期的な健康診断や特殊健診を通じて、潜在的な健康リスクを早期に発見し、適切な対策を講じることが可能です。ここで、「問題点・課題」を把握し、「ターゲットを特定」し、解決するための「対策」を打つことができるようになります。(資料1参照)
企業は、従業員の健康情報を統計的に分析し、共通する健康リスクを特定して、全社的な健康増進プログラムを設計することができるようになるのです。
例えば、ある企業が従業員の健康診断データを分析した結果、多くの従業員が生活習慣病のリスクを抱えていることが判明した場合、その時点で「問題点・課題」が明確になります。「ターゲット」もリストより名確認になります。その企業は従業員に対して運動プログラムや栄養指導を提供することで、リスクを低減する「対策」を講じることができます。このような取り組みは、長期的には医療費の削減や病気による欠勤の減少につながります。最終的な生産性向上、業績向上への近道となるのです。

資料1

■ストレスチェックと心の健康

近年、ストレスが生産性や健康に与える影響が重視されています。ストレスチェックを実施し、職場のスト レス要因を明らかにすることで、問題点・課題が明確になります。そのストレス要因を排除することで、従業員の心の健康をサポートし、パフォーマンス向上につなげることができます。ストレスチェックの結果を基に、従業員が抱える問題を早期に発見し、カウンセリングやメンタルヘルスケアの提供を行うことも可能です。さらに、職場環境の改善も心の健康に寄与します。例えば、業務量の適正化や休暇の取得促進、リラックスできるスペースの設置などが効果的です。従業員が何に対してストレスを感じているのかを把握することで、問題点・課題を明確にすることにつながります。

■健康管理業務と従業員の自己管理

健康管理業務は、企業が従業員に対して提供する重要なサービスです。健康情報の収集や健康増進プログラムの実施を通じて、従業員が自己管理を促進し、健康的な生活習慣を維持することを支援します。企業は、健康管理業務を通じて従業員の健康意識を高め、自己管理能力を向上させることが求められる時代となっています。
例えば、定期的な健康セミナーや健康増進イベントを実施することで、従業員が積極的に健康維持に取り組むよう促すことができます。さらに、健康アプリなどを利用して健康状態をモニタリングすることも有効です。その結果、「従業員が自己管理を徹底することで、健康リスクを低減し、生産性の向上が期待される」という流れが構築されていくのです。
自己管理を促進し、参画意識が高まることで、「運動習慣の割合が低い」「食生活のバランスが悪い」など、問題点・課題が明確になっていくこともあります。

02-生産性、業績を向上させるために

■健康経営施策の推進

健康経営施策は、企業の経営戦略の一環として位置付けられるべきです。これには、リーダーシップの関与、組織文化の整備、従業員への教育・啓発などが含まれ、全社的な健康意識の向上に寄与します。企業のトップマネジメントが健康経営に対するコミットメントを示すことで、従業員のモチベーションが向上し、健康施策が効果的に実施されます。
例えば、健康経営に取り組む企業は、健康に関するビジョンや目標を明確にし、全社的な取り組みとして推進します。健康経営施策の一環として、社員が参加できる健康増進イベントやキャンペーンを定期的に開催することも重要です。従業員同士の交流を深め、チームワークを強化することで、職場全体の健康意識が高まり、生産性の向上が図られます。

■健康経営と生産性の向上

健康経営が生産性向上に与える影響は、さまざまな研究で実証されています。健康な従業員は、集中力や創造性が高く、病気や疲労による欠勤が少ないため、仕事の質が向上します。また、健康的な職場環境は従業員のエンゲージメントを高め、離職率の低減にもつながります。
例えば、健康管理データを基にした個別の健康プランの提供や、ストレスチェックの結果を活用したメンタルヘルスケアの充実は、従業員のパフォーマンスを向上させる一助となります。また、フィットネス施設の設置やスポーツイベントの開催は、従業員の体力向上とリフレッシュに寄与し、生産性の向上に直結します。さらに、健康経営施策を通じて従業員のワークライフバランスを重視することで、仕事と私生活のバランスが取れた健康的な生活を送ることが可能となり、結果として業績の向上につながります。
このように、健康な従業員を一人でも多く増やす工夫を行うことによって、生産性の向上へとつながっていくのです。

03-企業実践例と成果

■企業実践例と成果

実際に健康経営を実践している企業の例を挙げると、伊藤忠商事株式会社では、「がんと仕事の両立支援」を掲げ、国立がん研究センターと提携した検診の実施や、在宅勤務・勤務日選択制など治療と仕事を両立するための多様な働き方を整備しています。特に就労世代における女性のがん罹患率が男性よりも2~3倍であることを踏まえ(問題点・課題の把握)、「子宮頸がん検診の費用補助」(ターゲット:女性社員)等をする(対策)など、女性活躍推進においても重要な役割を果たしています。罹患した社員をサポートすることが組織の団結力を高め、企業価値の向上にもつながっていくと考えて実践されています。
2010年度を1とした場合の労働生産性推移(連結純利益÷単体 従業員数)は、2022年度については、2010年度比「5.2倍」の労働生産性となっており、生産性が上がっている成果を残しています。
【ACTION!健康経営 健康経営銘柄 2024 選定企業紹介レポート】参照)
さらに、株式会社ベネフィット・ワンでは、生活習慣病の原因となる肥満解消に取り組んでいます(問題点・課題の把握)(ターゲット:生活習慣病のリスクが高い社員に対して)運動促進や、特定保健指導率の向上(対策)を図っています。運動習慣比率は2019年度15.3%から2022年度20.5%に向上しており、特定検診受診率も2020年度74.2%から2022年度89.3%に向上しており、売上高も2021年度から2022年度で110%アップという成果を残しているのです。
【健康長寿産業連合会 『健康経営先進企業事例集 2024』の発表について】参照)

このように、従業員の健康状態が改善され、生産性の向上や業績の向上につながっていくのです。

04-健康経営の未来

健康経営は、今後ますます重要性を増す分野です。企業は従業員の健康を重視することで、持続可能な成長を実現することが求められます。特に、デジタル技術の進展により、健康管理データの収集や分析が容易になるとともに、個別の健康支援がより精密に的確に行えるようになります。
今後、企業は健康経営の一環として、AIやビッグデータを活用した健康管理システムの導入を進めることが期待されます。これにより、従業員一人ひとりの健康状態をリアルタイムでモニタリングし、早期に適切な対応を行うことが可能となります。また、リモートワークの普及に伴い、テレワーク環境下での健康管理やメンタルヘルスケアの重要性も増しています。企業は、新しい働き方に対応した健康支援施策を検討し、柔軟かつ効果的な健康経営を実現することが求められます。
健康経営は、単なるコスト削減や福利厚生の充実に留まらず、企業の競争力強化と持続的成長を支える重要な要素です。企業が従業員の健康を重視し、全社的な健康経営施策を推進することで、従業員の生産性向上や業績向上が期待されます。未来の健康経営は、デジタル技術を活用した革新的な取り組みと共に、より一層の進展を遂げると考えられます。

執筆者経歴

Keep Running 代表(https://keeprunning-studio.com/) キープランニング株式会社 代表取締役
楢木 十士郎 氏
大手旅行会社勤務、製薬会社勤務を経て、2023年より現職。30歳から走ることに目覚め、24時間で何キロ走れるか距離を競うウルトラマラソンの4期連続日本代表、3期連続キャプテンを務める。今も世界へ挑戦し続ける。会員制ランニングスクール「Keep Running」を運営しながら、法人対象に「健康経営」の研修・サポート事業を行う。「健康経営」に必要な「運動」「栄養」「休養」をサポートする。

【実績】

<IAU24時間走世界選手権 日本代表>(※IAU:国際ウルトラランナーズ協会)
2013年 255.940km 6位 団体戦銀メダル(オランダ)
2015年 215.694km 59位(イタリア)
2017年 251.087km 14位 団体戦金メダル(北アイルランド)
2019年 250.865km 16位(フランス)

【資格】

MBA(経営学修士,GLOBIS 2022)/健康経営エキスパートアドバイザー(認証番号:23001370)/予防医学指導士(ID:R601379)/ランニングアドバイザー/日本スロージョギングベーシック/アスリート栄養食インストラクター/スポーツフードマイスター